【2024年9月定例会一般質問】「学校の水泳授業について」

令和6年1月31日に教育・こども常任委員会において、「水泳授業における民間のプール施設と人材の活用について」と題した提言書(以下提言書と呼びます)が提出されました。内容は学校で行われている水泳の授業について、他市の事例にあるような民間施設や人材を活用することを求めるものです。

過去にさかのぼれば、平成29年3月定例会の代表質問で当時日本維新の会に所属していた福井きよし議員が水泳授業の民間委託を提言、同定例会の一般質問では公明党の大川原成彦議員が詳細に質問をされています。令和2年にも当時の公明党、山口えいじ議員が同様の提言をされています。

私も平成29年7月4日の教育こども常任委員会で、春風小学校 教育環境整備事業基本計画に対するパブリックコメントの結果について報告があった際に、工事期間中プールが使用出来ないことを踏まえ、上甲子園中学校プールの活用を検討するよう要望しました。また重ねて学校プールの稼働率が極めて低いことを指摘した上で、千葉県佐倉市で民間のプール施設を利用して二つの学校プールを廃止した事例を取り上げ、プール施設の集約の効果について今後検討するよう要望しました。翌年、平成30年2月8日の教育こども常任委員会では、安井小学校の改築時に春風小学校同様プールが使用できなくなることを受けて、地域の民間プール施設の活用についても検討を進めるべきと質疑しました。当時市は「学校近隣のプールを有する民間施設の利用も現在検討している」と答弁しており、実際にプール施設は利用されましたが休館日による場所だけの利用に留まり、佐倉市のような人材活用の実施には至りませんでした。

私が当時の委員会で先進事例として取り上げた佐倉市では、平成25年から小学校の水泳授業を民間へ委託しています。平成31年1月には「佐倉市 学校プール・市民プール再編に向けた調査業務委託の報告書」を作成し、老朽化の進む学校プールや市民プールの再編・再整備を通じて、「市の財政負担等の軽減」と「市民満足度の向上」の両立を可能とした再編事業モデルの構築を目的とする方針を打ち出しました。その内容は様々な検証を行った結果、公設民営の屋内温水プールを新たに2つ整備し、既存の中学校屋内温水プールと合わせて3つの施設で全市の児童・生徒に水泳指導補助の民間委託を実施するというものです。その後の進捗について、先週佐倉市の担当者さまと電話で確認したところ、コロナウイルスの影響で屋内温水プールの建設はいったん保留としながらも、水泳授業の民間委託は以前より受け入れ事業者が3つ増え、現在6つの小学校に拡充・実施をされているそうです。民間委託による水泳授業の実施についてメリットを伺ったところ、
●インストラクターの指導が大変良く児童から好評
●プールが綺麗で水も温かく、学校にはない遊び道具があるので児童から楽しいとの声が多い
●学校の先生からも好評
というご意見を頂きました。 私もこの報告書を読ませていただきましたが、佐倉市の姿勢はどうすれば目的、つまり「市の財政負担等の軽減」と「市民満足度の向上」の両立を達成できるのかを念頭に置き、状況の変化にも対応しながら着実に前へ進めていることがはっきりと伝わってきます。

一方の西宮市は令和6年4月17日に開催された教育子ども常任委員会で、提言書の内容を踏まえた各委員からの質問に回答を行っています。議事録の内容を整理すると
●あくまで授業の委託は改築時の時だけ
●先進事例はこれから研究
●現場の意見もこれから聞いていく
という内容でした。

提言書で公明党の大川原委員は「かねてより学校水泳授業の民間プール活用を提案してきたが、市教委は具体的検討などの動きはみられない。」と記載されていました。私も同じ意見です。
●佐倉市の検証は十分参考になること
●数々のメリットが確認出来ること
加えて、水泳授業の民間委託を進めるべきとの提言書が委員会から提出されたことは大変重いと感じています。そこでお尋ねします。

【質問】提言書にある通り水泳授業の民間委託を進めるべきと考えるが、市の考えはどうか?仮に実施しないというのであれば、この取り組みが実施出来ない理由とは何か?ご回答をお願いします。

【教育委員会答弁】学校の水泳授業の民間委託について、お答えいたします。議員から7年前にもご指摘いただきましたとおり、学校プールは稼働率が低い施設でありながら、建設費などのイニシャルコストや水道料金などのランニングコストが高額な施設であるため、民間施設の活用などについて検討を進めるべき施設であることは認識しております。平成31年2月に策定した「西宮市学校施設長寿命化計画」では、プールの整備方針について検討する際に、市内の民間事業者に水泳授業の受け入れについて聞き取り調査を行いました。当時は大半の民間事業者から受け入れ困難という回答を得たため、計画の中では「学校間のプール共用化の可能性を検討する」としたところです。しかしながら、現在では全国的にプールの民間活用や共用化が見られるようになり、教育こども常任委員会から提言もいただいたことから、改めて市内の民間事業者に聞き取りを行った結果、水泳授業の受け入れに意欲的な民間事業者を複数確認することができました。また、人件費や建築資材などの高騰により、施設整備費も大幅に増大していることや、教職員の働き方が大きな課題になるなど、この数年間で学校プールを取り巻く状況は大きく変化しております。ご質問にあります、水泳授業を民間委託できない理由として、学校毎の移動手段や授業時間の確保、安全管理上の課題の解決のほか、費用対効果にも課題があると考えております。現時点において、費用対効果を検討したところ、水泳指導やバス輸送も含めた民間への委託費用と、水道料金などのランニングコストのみを比較すると、本市では民間への委託費用が高額になります。そのため、プールの建て替え時や集約化を想定し、イニシャルコストとランニングコストを含めた長期的なコスト比較と、学校毎の移動手段や授業時間の確保などの課題について、改めて検討を進めてまいります。

答弁では●民間施設の活用などについて検討を進めるべき施設であることは認識している。●一方、費用対効果を考えた場合、バス輸送も含めた民間への委託費用と水道代などのランニングコストのみを比較すると、民間への委託費用が高額である。というものでした。

佐倉市の学校プール年間1校あたりの維持管理経費は約100万円、これは本市と同等です。委託費はH26~H29の実績で約900万円となっており、児童1人あたりの委託費は約5,600円となっています。ここで3点再質問です。

【再質問】
1点目。佐倉市と比較して、本市が想定する民間の委託費はどの程度なのか?また「民間への委託費用が高額」とのことだが、妥当な金額とはどのようなものか?
2点目。議案第210号「苦楽園中学校・苦楽園小学校長寿命化改修事業」の中で、それぞれのプール改修にかかる費用はいくらか?
3点目。今後予定されている大社中学校の改築工事で学校プールの設置は予定されているのか?

ご回答願います。

【教育委員会】民間委託費用については、児童数や授業時数、バス輸送が必要かどうかなどの条件によって大きく変わりますが、バス輸送が必要な学校で、現行と同等の授業時数を確保することを想定した場合、現時点の見積では、1学年3学級の中規模な小学校で、プール指導等に関する費用が約500万円、バス移動に関する費用が約300万円、合計で年間約800万円、児童一人当たりに換算すると年間1万3千円程度になると見込んでいます。また、導入する際の妥当な金額についてですが、短期的には水道料金などのランニングコストしか削減効果が生まれないため、1校当たり約100万円が比較対象になると考えております。次に、苦楽園中学校・小学校の長寿命化改修事業におけるプール改修費用についてですが、デザインビルド方式で改修工事を実施するため、概算になりますが、校舎の屋上にプールを設置している苦楽園中学校では約4,300万円、地上に設置している苦楽園小学校では約5,000万円を見込んでおります。最後に、大社中学校の校舎改築でプールを設置するかについてのご質問ですが、現在、基本構想・基本計画を策定中であり、プールに関する計画は未定です。

妥当な金額は?との質問に、「ランニングコストの費用となる1校100万円が比較対象」という回答には驚きです。最初の答弁にある「建設費などのイニシャルコストや水道料金などのランニングコストが高額な施設」という認識があれば、「どうすれば学校プールを廃止できるか」という考えに基づいてイニシャルも含めた費用対効果を検証すべきです。今回苦楽園小学校・中学校の長寿命化改修事業の中で、学校プールの改修費は総額で約9300万円です。現時点で水泳授業の方針が決まっていない中、今後すべての学校で水泳授業の委託を前提に学校プールを廃止する方針となれば、30年維持する為に多額の費用を投じた両プール施設が無駄になる可能性があります。また今後予定されている大社中学校の改築工事で仮にプール施設を整備する場合、必要な費用として約2.2億円と試算されています。この金額は資材高騰や労務単価の上昇による影響で、さらに高くなることも予想されます。水泳授業の委託は今後の改築や長寿命改修の在り方にも大きく影響します。出来ない理由を並べておられますが、そうならない為に7年前から指摘していることを忘れないで下さい。全市での実施を前提に長期的なコスト比較と諸課題の早急な検討を行い、大社中学校の基本構想・基本計画までには一定の方向を示すよう要望します。また佐倉市では市民プールについても合わせて検討を行っています。本市には樋之池市民プールがありますが、こちらも同様の課題が存在します。この機にあわせて検討頂くよう重ねて要望します。

関連する民間事業者へ「どうすれば水泳授業の委託が可能となるのか」を詳しくヒアリングやアンケート等実施を行うことも重要です。水泳授業委託の実施は受け皿となっていただく民間事業者の協力が不可欠です。また1人あたりの委託費で予算額が大きく変わってきます。今回の見積もりでは年間1万3千円程度ということですが、佐倉市との金額の差がどのような原因で生まれたのかなど、丁寧に調査する必要があります。また民間事業者のアイデアにもしっかりと耳を傾けて下さい。効果的な手法を提案頂ける可能性があります。ちらも要望します。あと佐倉市では中学校の水泳授業を中止したという大変興味深いお話を伺いました。他の自治体でも中学校の水泳授業を中止する動きがあるようです。現時点で私は中学校の水泳授業について中止・継続どちらの立場にもありませんが、委託費予算に関連することから、中止に至った経緯や生徒の反響など調査するよう要望しておきます。

財政構造改善を実施する本市において、水泳授業の委託は短期的なコスト削減が見込めない、むしろ負担増となることに懸念をお持ちなのは理解できます。しかし、佐倉市の担当職員さんに「学校プールの維持管理費よりも、委託費の方が高額になりますが、水泳授業の委託実施を決断したポイントは?」と質問したところ「お金よりも子どもたちへのサービスの質を優先しました」と回答されました。子どもにも学校現場にも好評、長期的には削減効果が期待できるこの水泳授業の委託について、「実施する方向で検討する」と答弁いただけないことは大変残念です。本市の財政状況は厳しい中にありますが、市民サービスが低下することがあってはなりません。財政の無駄をなくし、西宮市民の皆様が良い街だと感じて頂けるよう、日本維新の会の一員として今後も当局へ効果的な提案を続けて参ります。