3月定例会一般質問⑦ こどもの食への関心を育てる取り組みについて


娘は本当に良く食べます。
最初は食べる量が多く心配したこともあったくらいです。
おかげで大きな病気もせず育ってくれています。
食べることは生きること。娘には常に食への関心を持って欲しいと思います。

3点目は【こどもの食への関心を育てる取り組みについて】です。

前回の内容は以下をご参照ください。
3月定例会 一般質問⑥ 栄養士と学校給食について

各学校では10月に兵庫食育月間としてさまざまな食育の活動を行っております。市内の小学校40校、中学校20校、特別支援学校1校の計61校で取り組みが行われており、すべての学校で実施されている取組件数は合計218件で、述べ開催日数は随時など不確定なものを除いて約1614日となっており、全ての小・中学校で取り組みは実施されています。限られた時間と人材のなかで、栄養士や学校の先生が様々な工夫を凝らし、時間をかけてプリントを作成していることは現場でも拝見しています。「給食だより」や「食育ニュース」には地産地消、栄養、衛生、食と健康、食文化、伝統料理など、食に関する様々な情報を掲載して児童や保護者に配布を行うことや、学校の先生が朝学活や給食の時間に、これらを用いて食育を推進しています。また西宮市内の酒蔵や博物館、明石の魚の棚や淡路の牛乳工場などの見学といった環境体験を中心に校外学習を実施しております。さらに「家庭や地域とつながる食育の推進」をテーマに、味噌作りや昔の道具を使った精米体験など、全学年の取組みの発表を行っております。しかし、こうした取り組みに費やす時間や内容に課題があることがわかりました。


上の図は平成27年度の兵庫食育月間に関する取組についての資料をまとめたものです。ここには小・中学校で行われた食育の取り組み内容や開催日数、取り組みを行った対象者などが記載されています。確かに室内での取り組みは全61校で行われていますが、野外活動になると実施している学校は13校にまで落ちてしまいます。また生徒に対する取り組みは全校で行われていますが、保護者に対しては36校、学校の先生に対しては23校と全校では行われていません。


さらに上の図をご覧ください。これは学校の取り組みにおける内容の区分とその主な詳細をまとめたものです。社会見学や農業体験は合わせて19件となっており、全体の8.7%しか実施されていません。また農業体験で対象となる作物は、ほとんどがサツマイモであり、残りは稲や米など数種類しか扱っておりません。また地域交流を図る取り組みも4件と極めて少ない数字となっています。食材の知識や歴史なども実施が多いとは感じられません。こうした内容を見てみると、学校によっては実施が困難な取り組みや、実施できる学校とそうでない学校とで内容の格差が生じていることがお分かりいただけます。農業体験については、校内に畑がある学校や近隣に畑のある地域では実施しやすくなりますが、都心部で学校や近隣に畑がない学校では生産農家への交渉や移動の負担など多くの手間や時間が必要となることから、実施が困難となることが予測できます。高い関心を引き出すための特別な取組をおこなうためには、多くの手間を必要とするだけでなく、高い企画力も必要となり、学校だけで実施を行うことが困難であることは容易に考えることができます。

近年では食物がどのように栽培されているのか、生産者の苦労などを知らないこどもたちが増えており、実際に作物が育つ環境現場を見る、触れる、そして実食することは、こどもたちにとって重要な体験です。また日頃から見守り活動を実施していただいている地域の自治会や高齢者の方々と地域交流をかねて一緒に食事をすることは、昔の食体験を学べる環境としても重要な取り組みであると考えます。さらに食の製造に携わる方や調理に関わる料理人、西宮市の食の歴史などに詳しい専門家から学ぶ食の知識や歴史など、地域には食への大きな関心を生む素材がたくさんあります。学校の負担を軽減しながら、今学校で行われている取り組みに対してさらに高い効果を生むことを目的としたアウトリーチ事業を、こうした素材を活かして行うべきだと考えます。さらに保護者の方や先生にも率先して参加を促し、近年社会問題となっている孤食や欠食の問題、不規則な食事による小児肥満、新型栄養失調や食が原因による発達障害などにも関心を持っていただき、情報を共有することが重要です。


夙川地区では苦楽園ストアーズミーティング主催の小学生向けイベント、苦楽園キッズタウンが3月末に開催されます。こちらは職業体験型のイベントで、地域のレストランが一堂に参加して小学校高学年を対象にプロの調理や食材、日本をはじめ世界中の食文化を学ぶという取り組みです。


参照:日本食べる通信
また上の資料は一般財団法人日本食べるリーグ通信が作成している雑誌で、独自の哲学でおいしい食べものをつくり続ける生産者にクローズアップして特集記事を掲載しています。2013年に東北から始まったこの新たな情報誌はいま全国へと広がっており、兵庫県にも活動を行っている方々がいます。つくる人と食べる人、農山漁村と都市をつないで食の常識を変えていくというコンセプトで作成されており、現代のこどもたちやその保護者の関心を引き出す情報が多く掲載されています。ここでは実際の畑に行って現地で収穫し、その場で調理して食べるなどの取り組みも行っています。

また京都市の小学校では、食に関連する企業や大学で構成される日本アカデミーの支援によって、老舗料理店の料理人が子どもたちに鰹だしの取り方を教え、食を通じて命の大切さを伝える「日本料理に学ぶ食育カリキュラムモデル授業」が行われています。

参考:平成27年度 日本料理に学ぶ食育カリキュラム授業

どのような内容のものを、どのような形で取り上げ、どのように伝えるのか、内容や手法の精査は必要ですが、高い関心はこどもやおとなに関係なく、高い知識や技術など人の興味を引きつけるものから生まれます。こうして生まれた関心から興味が一人歩きをして、自ら進んで食の知識や教養を身につけるようになります。これはまさに食育の定義である『様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得する』ためのきっかけになると考えます。

西宮市は歴史的産業である酒蔵のまちです。また飲食産業や飲食店も多く存在するまちです。こうした企業やお店による独自の活動や、地域では保健所を中心としたさまざまな食の取り組みも行われている食意識の高い街です。企業や地域と連携して、こどもの食への関心を育む取り組みを学校と一緒になって行うべきです。

「現在の学校における食への取り組みについて、食育基本法に示されている「様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てること」という定義として充分な内容であるとお考なのか?」

という質問に対して市は

「学校における食育の推進については、学習指導要領の総則において、「体育科の時間はもとより、家庭科、特別活動などにおいても、それぞれの特質に応じて適切に行うよう努めること」とされています。各学校においては、食育の重要性を十分に認識しており、食育基本法に示されている定義も踏まえながら、学習指導要領に示された趣旨に沿って、家庭科などの授業内容や特別活動に位置づけられている学校給食を中心に、子供たちの食に関する知識の習得、望ましい食習慣の形成に取り組むとともに、健全な食生活を実践できる力を育んでいます。」
とのご答弁を頂きました。

さらに
「学校側の負担軽減や専門的な内容の実施が困難とされる課題の改善、さらに今学校で行われている食への取組をより効果的なものとすることを目的として、生産農家に関わる方や食材を扱う調理人や製造者、西宮市の食の歴史に見識を持つ専門化などと連携して、食の関心を育くむという目的に特化したアウトリーチ事業を学校に向けて行うべきだと考えるが市のお考えはどうか?」

という質問に対して市は

「平成28年度、学校における体験事業の整理と拡充として、学校で行われている様々な体験学習に関し、新たなプログラムの開発や、学校が活用しやすい一元化・カタログ化を予定しております。議員ご提案の外部の食の専門家のアウトリーチ事業につきましても、この取り組みに位置づけて、学校園のニーズに即した効果的な食育の推進が図れるよう努めてまいります。」
とのご答弁を頂きました。

確かに学校ではさまざまな食育の取り組みを行っていることは事実です。
しかし、学校で対応に格差が生じていることは問題です。
こうした格差の要因が立地の問題や運営上の負担であることは明確です。
であればアウトリーチ事業という形でプログラムを提供し、学校の運営負担軽減や実施のための不足要因を補うことは重要であり、このアウトリーチ事業によって現在学校や市内各地で行われている食育活動の効果をさらに高めることが可能であると考えます。

こどもたちに教えるべき「様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力」は、大人になった時に大きな成果をもたらします。今後もより効果の高い食育の促進について提案していきます。

長文にお付合い下さり誠にありがとうございました。
次回は最終回。今回の一般質問をまとめます。