3月定例会一般質問⑥ 栄養士と学校給食について


最近お手伝いにハマっている娘。
もう少し大きくなったら私に料理とか作ってくれるのかなぁ。
親バカな妄想が止まりません。

次はこどもの食の環境についてです。

 食は人間が生きるために必要な栄養の摂取や健康維持だけでなく、食を通じて家族や友人とのコミュニケーションを育む役割や、人生を楽しむ娯楽としても重要な行為であり、小さなこどもから高齢者まで幅広い世代において人が生きている限り続く行為です。特にこどもの人格形成に食事の影響が大きいとされており、食への関心を育むことが重要であるという観点から、国は平成17年に食育基本法を制定しました。食育基本法の中では「食育」の定義を、『生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきもの、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てること』としています。

 西宮市では小・中学校の家庭科での授業や、学校独自の食育指導や活動、そして毎日の学校給食において、こどもたちに食育を実施しています。今回はこどもたちの食の環境に関する問題について、3つのテーマで質問を行いました。

 1点目は【栄養士の配置問題について】です。
 現在西宮市では市内の小・中学校と特別支援学校など計61校で、40382人のこどもを対象に学校給食を実施しており、多くのこどもたちの栄養管理と食育を担っています。西宮市の小・中学校には国が定める公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律の規定に沿って、兵庫県から栄養士が配置されています。

 学校に配置された栄養士は、こどもたちへの食事の指導はもちろん、孤食・欠食など食の環境に問題の可能性があるこどもへの対応や、命に関わるアレルギー対応など大きな役割を担っております。しかし、現在市内の学校で栄養士が配置されているのは61校中45名で全体の73%となっており、栄養士がいない学校も存在することから、食育やアレルギー対応などで格差が生じています。これは国の規定で児童または生徒の数が550人以上の学校は1名、549人以下の学校は4校に1名の栄養士を配置することと定められていることが原因です。近隣市における栄養士の配置状況は、尼崎市が43校中38名で全体の約88%、芦屋市では小・中学校9校全てに栄養士が配置されており、配置の比率をみてもおわかり頂ける通り、西宮市は他市と比べて栄養士の配置比率が低い状況となっております。こうした自治体では市独自の予算で栄養士の配置を行っており、西宮市では独自予算による栄養士の配置を行っていません。

そこで私は
「栄養士の役割における重要性や他市の配置状況を考慮すれば、西宮市でも独自の予算で栄養士の配置を進めるべきだと考えるが市の考えはどうか?」との質問をさせていただきました。

これに対して市の回答は
「学校教育における食育のより一層の推進及び、食物アレルギー対応の充実のため、全校配置は大きな課題と認識しており、昨年7月の学校給食審議会の答申を踏まえ、市費での配置を検討する必要があると考えております。平成28年度中に改定予定の学校給食基本方針の見直しの中で、栄養士などの配置について整理してまいります。」
とのご答弁をいただきました。

 私が学校現場で視察をさせて頂いた時、各学校の栄養士さんの取り組みは大変関心の高いものでした。アレルギー対応に関して細かな配慮を行っていることや、そしてこどもたちの給食の食べ方をチェックし、そこから家庭での食環境を察知し対応を行っていることなど、学校における栄養士の重要性を最も感じた場面でした。全校で1名いるかいないかという現状は、栄養士さんの負担も相当大きいことが予測できます。こどもの安全や栄養管理において栄養士の配置は大変重要です。まずは全校への配置を実施頂くよう強く要望させていただきました。

 2点目は【安全・高品質・底コストな学校給食について】です。
西宮市の学校給食は市の直営によって運営されており、正規の調理職員や嘱託職員など、いわゆる技能労務職と呼ばれる職員の方々が給食の現場に配置されています。嘱託職員は正規職員とは異なり非常勤となるため、1年ごとに雇用の契約更新を行います。昭和52年度から給食現場に嘱託職員が配置されたため、嘱託職員の指導を目的としたチーフ調理員という役職が新たに設けられました。このチーフ調理員は非常勤である嘱託職員の管理・指導を目的としていることから正規職員のみが担える役職となっており、現場管理の重要性を考えれば非常勤の嘱託職員では担うことができません。


この図は西宮市の学校給食で働く、正規職員、旧嘱託職員、新嘱託職員の各給与の平均をまとめた表となっております。それぞれの平均年収は、正規職員で約639万円、旧嘱託職員で446万円、新嘱託職員で292万円となっています。民間の調査機関による資料によれば、民間で働く調理人の平均年収は平成26年度で約337万円です。比べると学校給食の正規職員や旧嘱託職員の年収が高額であることがお分かり頂けます。また、正規職員と旧嘱託職員の総額は給食人件費全体の56.7%と半数以上を占めており、給食職員の配置人数全体の4割となっています。言い方を変えれば、給食人件費全体の残り43.3%を6割近い新嘱託職員などへ分配していることになり、給食の人員配置に悪影響を及ぼしていることは明らかです。こうした背景から正規給食職員の採用は現在凍結され、平成26年4月以降の新たな採用は行なわれていません。

さらにこの図は正規調理員の年齢別人員数を表した表です。現在正規給食職員は27年度4月現在で84名となっておりますが、50歳以上の割合は全体の約24%となっており、そのうち再任用となった60歳以上が7名となっております。今後はこうした年齢層から退職者が出ることから、正規職員数が減り、給食現場の管理を行うチーフ調理人の配置にも影響がでる恐れがあります。

 一方で隣の尼崎市では、プロポーザル方式による給食調理業務の民間委託を平成20年から行っています。平成27年度現在の委託校数は、小学校・特別支援学校43校中31校となっており、28年度は新たに2校が委託対象となります。


この図は尼崎市と西宮市での学校給食に掛かる人件費・調理職員数・食数などを比較した表です。この表をもとに尼崎市で民間委託を実施している学校について、調理人1人あたりの食数を計算すると、およそ68食となります。西宮市も同じ条件で計算するとおよそ138食となり、調理人1人あたりの調理食数は尼崎市のほぼ倍となっております。さらに尼崎市で民間委託となった学校での給食調理員の配置人数は平均で約8名となり、西宮市よりも3名以上配置が多くなっております。そして民間委託料、つまり給食調理にかかる人件費についても、尼崎市の委託料の総額は約7億3400万円となっており、1学校あたりの人件費はおよそ2360万円となる一方、西宮市は人件費の総額が16億1000万円となっており、1学校あたりおよそ2640万円となります。尼崎市の人件費を西宮市に当てはめた場合、人件費の総額はおよそ14億4387万円となることから、およそ1億6613万円のコスト削減が可能となります。調理人1人あたりの調理食数が西宮市よりも70食分少なく調理負担が少ないこと、人員配置が3名以上多く配置できていること、1校あたりの人件費がおよそ280万円抑えられていることなどを考慮すれば、尼崎市の学校給食が民間委託によって効率的に人件費を抑えられているだけでなく、食数の負担や配置人数などを見ても安全性が高いことは明らかです。

そこで私は
「学校給食の今後の方針を検討する時期にある中、高額な給与が問題視される正規の職員と旧嘱託職員の総額が給食人件費全体の56.7%と半数以上を占めている状況において、コストを抑えながら学校給食の安全・品質の向上に向けた改善を、現在の直営体制の中でどのように解決を図るお考えなのか?」

「また尼崎市が先行して行っている給食調理の民間委託は、コストの削減だけでなく、給食環境改善の観点からも有効であると考える。市の直営を継続しながら有効な解決策を見出だすことが非常に困難であると考えられることから、早急に民間委託への検討を行い、導入を実施すべきだと考えるが市はどのようにお考えか?」

という質問をさせていただきました。

これに対して市は
「給食調理体制の見直しにつきましては整理を行っているところでございます。学校給食にかかる人件費につきましては、平成15年度より嘱託調理員の任用について新制度を設け、コスト削減に取り組んでまいりました。現在の本市学校給食の水準を下げることなく、さらに人件費の効率化を図ることにつきましては、教育委員会としても十分認識しているところであります。したがいまして、給食調理体制の効率化を進めるにあたっては、本市の学校給食の質の保持を前提とし、効率化の一つとして民間委託の研究にも取り組み、安全性、安定性、経費、食育の推進など様々な観点から検討してまいります。」
という回答をいただきました。

私の感想から言えば、直営のまま市の答弁にもある人件費の効率化を図ることは不可能だと考えます。
なぜなら、コスト削減はより人件費の高い部分を削る必要があります。つまり正規職員です。しかし、正規職員でしか担えないチーフ調理人の配置も減ることから、結果として現場の管理が行えなくなるからです。もし仮に高額な給与が問題となっている正規職員を再び採用した場合、人件費の削減はほぼ不可能となります。

 私は是が非でも民間委託じゃないとダメだとは思っていません。また現場で働く学校給食職員の方々の能力や存在を疑っている訳でもありません。現場を視察させて頂いた時にも、こどもたちのために過酷な調理場で一生懸命調理を行う姿を私も拝見しております。しかし、学校給食で最も重視しなければならないのはこどもたちの安全環境や品質の向上であり、それが市の責任です。直営の中で改善が図れないのであれば、市は民間委託の実施を進めるべきだと考えます。たとえ民間委託を行ったとしても、今採用している方々を民間委託先で再雇用することも充分可能です。以上の内容をしっかりと踏まえ検討して頂くよう要望しました。

というわけで次回に続きます。