3<本市におけるオープンデータの取り組みと今後の展開について>
オープンデータへの取り組みは、政府のIT戦略本部がとりまとめた「世界最先端IT国家創造宣言」において、「公共データの民間開放(オープンデータ)の推進」が筆頭に掲げられており、国の成長戦略の中でも重要な施策に位置付けられています。すでに他の自治体では、二次利用が可能なオープンデータを活用した様々な事業が先進事例としてあげられており、その内容と成果を考えれば、本市でも積極的に取り組むべきだと考えます。
オープンデータとは、行政が保有する様々なデータを、市民との共有財産として公開・活用することを目的とするものです。本市も膨大な量の情報を所有していますが、これらの情報は、各所管で紙や画像、数字など、さまざまな形で保管されています。そして民間などがこの情報を活用することにより、利便性の高い行政サービスを生み出す可能性を秘めています。これらの情報を活用してもらうためには、①著作権や特許など、情報を使用するときに生じる規制や手続きを簡略化すること。②データを活用可能な形に加工しておくこと。この2つの条件が必要です。言い換えれば二次利用が可能となる、「オープンデータ」に仕様を変更しておかなければなりません。
では本市の膨大な情報を、オープンデータへと仕様変更する為にはどうすればよいのでしょうか。まず①の著作権や特許の規制簡略化については、クリエイティブ・コモンズという国際的非営利組織が発行するライセンスを使用することで解決できます。これにより、民間企業などが自由に本市の情報を利用可能となります。次に②の活用可能なデータ加工については5つの段階に分かれており、それは星によって表されます。海外のホテルで格付けに使用する星のマークと、意味合いは同じであるとお考えいただければわかりやすいと思います。1つ星がPDF(文書を確実に表示および交換するために使用されるファイル形式)、2つ星がXLS(Microsoft Excel標準のワークシートファイル、およびファイル形式)3つ星がCSV(いくつかの項目をカンマで区切ったテキストデータおよびテキストファイル形式)4つ星がURI(URLの考え方を拡張したもので、名前または場所を識別する書き方のルールの総称)、そして5つ星がLinked Data(ウェブ上でコンピュータ処理に適したデータを公開・共有するための技術の総称です。この5段階に種類別されたオープンデータでは、星の数が多ければ多いほど、そのデータで作成するためのコストパフォーマンスや機能価値が向上します。こうした作業を経て、行政が保有する情報はオープンデータとして生まれ変わります。
オープンデータがなぜ重要なのか。これだけでは分かりづらいと感じる方が多いことと思われます。なぜなら、これらの過程は活用の為に必要な「情報を整理する」作業にすぎないからです。
ではこのオープンデータが実際に民間によって活用された、神奈川県横浜市金沢区役所の事例をいくつかご紹介しながら、この取り組みの重要性をご説明したいと思います。
①「かなざわ育なび.net」
子育てや仕事、家の用事に追われ、多忙な日々を過ごしているお母さんたちが「どうすれば必要な情報を効率よく入手できるか」という課題を解決するために生まれたシステムです。このサービスは、WEBで提供されている様々な子育て情報を、オープンデータ化して整理し、PC・スマートフォンへの対応を行ったことで、郵便番号や子どもの生年月日などを入力したパーソナライズ機能により、情報へのアクセシビリティを高めたことが大きな特徴です。分かりやすく言えば、金沢区まるまる町に住む2歳のこどもを育てるお母さんに対して、まるまる町にある2歳のこどもに必要な施設情報を、居住地から近い順に並べ替えて表示をしたり、必要な事業内容だけを抽出して送信するサービスを提供する、というものです。これによってお母さんは、ホームページにわざわざアクセスして欲しい情報を集めるのではなく、必要な時期に必要な情報がアクセスするだけで簡単に入手可能になりました。
②金沢写真アルバム
金沢区の移り変わりを記録する貴重な写真を「区民の共有財産」としてアーカイブするためのサイトです。金沢区役所が広報などのために撮影して保有している記録写真を、オープンデータとして公開するとともに、区民からの写真提供も募集するなど参加型であることも特徴です。オープンデータ化によって、観光地の紹介やまちあるきイベント、学校教育、広報資料など様々な分野で活用が期待できます。
③減災クエスト
避難場所や町別世帯と人口、津波ハザードマップ、広域避難所収容人数などのオープンデータを利用した防災アプリケーションです。携帯に付随するGPS機能を活用し、現在地から最も安全と思われる避難推奨ルートを表示します。作りが人気ゲームをイメージしており、こどもが楽しく防災に関心を持てる点もユニークな発想です。
④Open Park Yokohama
市民に公園をより有効に活用してもらうために、公園に関連する情報をオープンデータ化して整理し、活用したサイトです。地図上に公園の場所が表示され、さらに指定した公園をクリックすると、その公園の遊具設置状況や禁止事項といった情報が共有できます。また遊具検索機能もあり、希望遊具と対象年齢を選ぶだけで該当する公園が表示されるサイトで、スマートフォンも対応しています。
繰り返しになりますがこれらの事例は、行政がオープンにしたデータを民間事業等が活用し、市民サービスの向上につながるサービスを提供した、という事例の一部です。このように、行政が保有するデータ化を進めることで、民間事業者等がデータを活用し、本市の抱える情報発信の効率化や、行政サービス向上に寄与するサービスを提供することも期待できます。この事業で最も大事なことは、市が所有する様々な情報がオープンデータとしてしっかり準備されているか、つまりオープンデータ・カタログの整備が行われているかが重要となります。そしてその整備にあたり、各所管の協力を得られる体制作りやルール策定、スケジュール管理や明確な役割分担が必要不可欠となります。
そこで以上の内容を踏まえて3点質問いたします。
【質問9】
本市が所有する多くの情報を公開し、民間の企業や団体に活用してもらうため、本市の各所管が管理する情報や、建物の画像などに伴う第三者への著作権など法的な制約を本市はどのように解決するお考えでしょうか。
【質問10】
現在本市が進めているオープンデータは、データ加工において五段階のどの状態にあるのでしょうか。また本市のオープンデータを、最も高い星5つの状態まで加工することに対する課題はなんでしょうか。
【質問11】
まだオープンデータ化されていない各所管が所有する一部情報を、情報公開の手続きを行うことなく積極的に開示していくことについて、どのような認識をお持ちでしょうか。本市の考えをお聞かせください。
以上3点についてご回答をお願いします。
【当局答弁】
3番目の「本市におけるオープンデータの取り組みと今後の展開について」のご質問にお答えします。
まず、はじめに、本市のオープンデータの取り組みにおける、著作権など法的な制約に関する解決方法についてでございます。
本市では平成25年度から調査研究を開始し、平成27年2月、市ホームページ上に、オープンデータの公開を開始いたしましたが、その際に、「西宮市オープンデータ利用規約」を策定いたしました。
その利用規約におきましても、著作権に関する問題を解決するために、オープンデータで一般的に広く用いられ、国も推奨している、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを用い、中でも利用者にとって、最も自由度が高い、「CC-BY(シーシー・バイ)」とすることを明記いたしております。
これにより利用者は、西宮市のデータを使用していることを明示し、本市のオープンデータサイトへのリンクを張りさえすれば、自由に利用でき、二次利用も可能としております。
一方で、市が所有する情報であっても、例えば、第三者から提出していただいた写真のように、市が著作権を有していないものもあることから、入手した際の条件を確認する手続きを踏むなど、各所管において適正なチェックが行われるよう、今後の庁内ルール策定の中で検討してまいります。
次に、データ加工における5つの段階に関する、本市の状況と課題についてお答えいたします。
オープンデータの二次利用の容易さは、データの保存形式によるところが大きく、ご指摘のように、オープンデータを推進する総務省の資料では、判読の編集や容易さに応じて1から5の、5段階に分類されます。
オープンデータを公開する上では、コンピューターで編集可能で、アプリケーションに依存しないデータ形式の、3段階目とすることが1つの目標と言われており、オープンデータに取り組む大半の自治体が、この段階であります。
現在、本市では13種類のデータを公開していますが、大半はアプリケーションに依存しないCSVという形式のデータで公開しておりますので、本市も3段階目にあるのが現状です。
オープンデータにおいて、最上級のデータ形式と位置付けられている5段階目は、データ同士がリンクしたデータでありますがまた、国内においては取り組みが始まったところであると認識いたしております。
平成27年度に、総務省と福井県内全市町などが、5つ星・5段階のオープンデータの公開および活用に関する「オープンデータモデル事業」を実施し、このモデル事業を通じて、5つ星でのデータ提供の問題などを整理・検討するとされていますので、それらの動向を見ながら、調査研究を進めてまいります。
次に、まだオープンデータ化されていない情報の、今後の開示に対する認識についてでございます。
オープンデータは、行政の透明性を高めるとともに、社会・経済活動の活性化にも繋がる、重要な施策と認識しており、市長をトップとする西宮市情報化推進本部のもと、取り組みを進めているところです。
この取り組みを、全庁に拡大する上においては、庁内データの棚卸しや公開可否の判断、二次利用可能なデータへの変換作業、最新状態を維持するための持続的な作業と、作業負担が課題となっております。
そこで、平成27年度から28年度にかけて、各所管が自由にデータを登録することができ、庁内外から容易にデータを検索できる機能を備えた、より利便性の高いオープンデータ専用サイトの構築に、取り組むこととしているところです。
また、データ収集にあたっては、政策局をはじめ各担当部局と連携しながら、先に述べました庁内ルールを作成するとともに、それにあわせて公開数の数値目標を設定するなど、効果的な実施を図ってまいります。
今後も、この全庁的な推進体制により、積極的なデータ開示に努め、オープンデータの取り組みを進めてまいります。
【はまぐち意見・要望】
【質問9】の「著作権など法的な制約に対する解決」について、「本市では『西宮市オープンデータ利用規約』に沿ってクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを実用していること、さらにそのランクは最も自由度が高い「CC—BY(シーシー・バイ)」である」とのご答弁をいただきました。すでに公開されている13項目の情報が同様の形で公開をされていることに、本市の情報公開に対する意欲を感じます。今後も情報の程度に応じてランク分けを活用し、利用者にとって利便性の高いデータの公開に取り組んでいただくよう要望いたします。また「第三者から提供いただいた、市が著作権を有していないものに関しても、事前に条件確認を行い、チェックを行うなど庁内ルールの策定を検討する」とのご答弁をいただきました。こうした著作権の問題は、民間による二次利用において重要な課題ですので、しっかりとルール策定に努めていただくよう、あらためて要望いたします。
次に【質問10】の「本市の情報公開における現状と今後の対応」について、「本市のオープンデータの現状は3つ星のCSVであること、そして今後国の動向などを考慮し、まずは3つ星であるCSVへの加工を行うことを目標とする」とのご答弁をいただきました。情報の加工形式はこの取り組みの中でとても重要なポイントです。例えば、ある所管で毎週定期的に更新を行う情報があるとします。HPにその情報を掲載するのであれば、その情報を改めてHP用に作り変える作業を毎回行わなければなりません。しかし、金沢区の事例にもあるアプリケーションを利用することを前提とし、所管での情報管理を普段からCSV形式に統一して行えば、そのままその情報をオープンデータとして公開するだけで、アプリケーションが更新された情報を利用者へ即時に提供できます。つまり普段の管理作業がそのまま更新作業に近い形となり、情報更新への飛躍的な効率化を図ることが可能です。オープンデータの取り組みは近年始まったばかりで、互換性において国がデータに統一形式を示していないことを考慮すれば、CSVを基準とすることは正しい判断であると認識します。CSVへのデータ加工を一定の基準とし、今後の動向によって5つ星への対応が可能な環境も整えていただくよう要望します。
最後に【質問11】の「積極的なデータ開示についての本市の考え」について、「市長をトップとする西宮市情報化推進本部のもと取り組みを進めている。データ収集にあたっては、政策局をはじめ各担当部局と連携し効果的な実施を図る。」とのご答弁を頂き、すでにこのオープンデータ事業が市の重要な施策として進められており、今後のデータ収集は政策局などと連携して取り組んでいくものと認識します。
繰り返しになりますが、市民にとって利便性の高い行政サービスが、民間企業などによって開発されるためには、本市がどれだけ情報を、オープンデータという形で積極的に開示できるかが重要です。また本市の重要課題に沿って、優先順位を決めて準備を進めることも大事です。例えば保育所の空き情報を提供することなども有効です。数字で管理している各保育所の空き情報を一定基準化し、○や×、△など保護者の方が一目でわかる表記に変換して情報を発信することで、保護者の皆様が必要だと感じている情報が手軽に確認できるだけでなく、窓口での作業負担も軽減できます。
総務省が全国を対象とした「平成25年通信利用動向調査ポイント」によれば、「スマートフォンは急速な普及傾向を維持し、50代以下の世代で顕著な伸びがある」としております。いずれは高齢者のスマートフォン普及率が拡大する可能性を考慮すれば、福祉や医療など高齢者層に関連する情報の公開も重要です。
先にも述べた先進事例のように、こうした端末に対応したアプリケーションは手段でしかなく、発信すべき情報を整理し、対応可能な形へと準備・更新を行うオープンデータへの取り組みこそ重要であると考えます。
現在本市が公開しているオープンデータは13項目ですが、先にも述べた金澤区のオープンデータ公開項目は、取り組みから約2年で83項目の公開を実現しております。平成25年に大石議員がこのオープンデータの重要性についてご指摘していることを考慮すれば、本市の公開数は金沢区と比較して積極的な取り組みとは言い難い状況です。他市がどのような情報を公開しているかなど公開内容も参考にしながら、各所管と連携を図り、積極的な公開を行っていただくよう要望します。
以上